クレジットカードの不正利用って何?
そもそも、クレジットカードの不正利用とは何なのでしょうか。
本人以外の人がカードを勝手に使う
クレジットカードの不正利用とは、クレジットカードの名義人以外の人が、クレジットカードを勝手に使うことを指します。
日本クレジット協会(JCA)の、2018年3月・クレジットカード不正使用被害額調査によると、クレジットカードの不正利用被害額は、以下のようになっています。
期間 | 不正利用被害額 |
2014年(1月~12月) | 114億5,000万円 |
2015年(1月~12月) | 120億9,000万円 |
2016年(1月~12月) | 142億円 |
2017年(1月~12月) | 236億4,000万円 |
この調査結果からわかるように、クレジットカードの不正利用の被害は、年々増加しています。クレジットカードを持っている限り、誰にでも不正利用の被害に遭う可能性があるのです。
なぜ不正利用されてしまうのか
クレジットカードを不正利用される原因には、以下のようなものがあります。
カード自体の紛失・盗難
クレジットカードの紛失や盗難により、クレジットカードが不正利用されることがあります。
落とした財布を拾った人が、名義人になりすましてクレジットカードを使ったり、街中で財布を盗まれ、クレジットカードを勝手に使われたりと、さまざまなパターンがあります。
海外での利用はとくに注意
海外にクレジットカードを持っていく場合は、とくに注意が必要です。滞在する国によっては、スリや引ったくりなどが多いためです。
また、空港で荷物から目を離した隙に、荷物ごとクレジットカードを盗まれたり、警官のふりをしてクレジットカード番号や、暗証番号を聞き出したりといったケースもあります。
クレジットカードが不正利用されたときの対処法。海外旅行・通販編
フィッシング詐欺
フィッシング詐欺によって、クレジットカードの情報を盗み取られ、不正利用されることもあります。
フィッシング詐欺とは、カード会社や公的機関、金融機関を装ったメールを送り、メール内に記載してあるURLから不正サイトに誘導して、クレジットカードの情報を盗み取る手口のことです。
『クレジットカードが利用停止されたので手続きしてください』など、もっともらしい理由が記載されているため、正式なメールだと思って個人情報を入力してしまいやすいのです。
スキミングの被害
クレジットカードの不正利用の手口には、スキミングという方法もあります。スキミングとは、クレジットカードの情報を機械で読み取って、不正利用する手口です。
ATMのカード挿入口に、スキミングの機械が仕掛けられていたり、会計時にクレジットカードを渡した際に、スキミングの機械で情報を読み取られたりします。
いつもクレジットカードを利用する場所で、クレジットカードの情報が抜き取られてしまうため、被害に遭ったことに気づきにくいのが特徴です。
EC事業者による個人情報漏洩
EC事業者による個人情報の漏洩が原因で、不正利用されることもあります。EC事業者とは、ネット上で物品やサービスを売買する事業をおこなう業者のことです。
ネットショップを利用する際には、必ず個人情報を入力しなければなりません。さらに、クレジットカード決済をする場合は、クレジットカードの情報を入力する必要があります。
しかし、利用したネットショップが悪質な業者だった場合、入力した個人情報を悪用される可能性があります。
また、きちんとした業者の場合でも、外部から不正アクセスを受けて、個人情報が漏洩することもあります。
不正利用かもと思ったら確認すること
クレジットカードを不正利用された可能性がある場合は、以下のことを確認しましょう。
利用した日や店舗名にずれがないか
不正利用された可能性があるときは、まずクレジットカードの利用明細書で、クレジットカードの利用日や店舗の名前などに、ずれがないかを確認しましょう。
たとえば、チェーン店でクレジットカード決済した際、利用明細書に利用した店舗の名前ではなく、大元の企業名が記載されることがあります。
また、クレジットカードの請求は、店舗がカード会社に売上データを計上することで確定します。
通常は、すぐに売上データが計上されるものですが、店舗によっては処理に時間がかかり、数日後にカード会社に売上データが計上されることがあります。
このような場合、クレジットカードの利用明細書には、実際にクレジットカードを利用した日ではなく、店舗がカード会社に売上データを計上した日が記載されることがあります。
カード利用店舗の名前や利用日に疑問がある場合は、カード会社に問い合わせてみるとよいでしょう。
家族が利用していないか
身に覚えがない請求がある場合でも、すぐに不正利用と判断するのではなく、家族が利用していないか確認しましょう。
クレジットカードの保管場所や暗証番号などを、家族が知っている場合、家族が勝手に利用している可能性があります。
クレジットカードの利用規約では、たとえ家族であっても、名義人以外の人がクレジットカードを利用することを禁止しています。
名義人以外の人がクレジットカードを利用したことが発覚した場合、クレジットカードを強制退会される可能性もあります。家族が勝手に利用することがないよう管理しておきましょう。
もし不正利用されてしまったら
もし、クレジットカードが不正利用されてしまったら、以下の流れで対処しましょう。
すぐにカード会社に連絡
クレジットカードの不正利用に気づいたら、すぐにカード会社に連絡し、クレジットカードの利用を停止してもらいましょう。
カード会社には24時間・365日対応している、クレジットカードの紛失・盗難用ダイヤルが設けられています。
クレジットカードを不正利用されてから、時間が経過すればするほど、さらに被害額が増える可能性が高いため、気づいたのが何時であっても、すぐに連絡することが大切です。
三井住友カードを紛失・盗難の際は|クレジットカードの三井住友VISAカード
カード会社の調査方法
クレジットカードの名義人から不正利用の連絡があると、カード会社はクレジットカードが利用された店舗に問い合わせるなどして、調査をおこないます。
このとき、どのような調査をおこなうのかは明かされていません。また、調査の結果、クレジットカードを不正利用した犯人が判明したとしても、それがカードの名義人に報告されることはありません。
警察にも被害届を提出
クレジットカードが不正利用された場合は、警察にも被害届を提出しましょう。なぜなら、クレジットカードの再発行手続きの際に、被害届を提出したときに発行される、『受理番号』が必要になることがあるためです。
また、カード会社によっては、警察に被害届を提出していないと、不正利用時の補償が適用されない場合があるので、必ず被害届を提出することが大切です。
クレジットカードの不正利用で警察に連絡?取るべき対処法を探る
カード会社はどこまで補償してくれるのか
クレジットカードが不正利用された場合、カード会社はどこまで補償してくれるのでしょうか。
返金されるケース
以下のケースに該当する場合は、不正利用された分の代金が返金されます。
個人情報流出の被害分
EC事業者による個人情報の漏洩や、スキミング・フィッシング詐欺によって、クレジットカードの情報が盗み取られたことが原因で、不正利用の被害に遭った場合は、利用代金が返金されます。
多くのカード会社では、不正利用の報告があった場合、その分の請求をいったん保留するようにしています。しかし、保留の手続きが間に合わず、引き落とされてしまうことがあります。
また、不正利用と思われる利用分が、すでに引落済みになっていることもありますが、このような場合は、不正利用の調査完了後に返金がおこなわれます。
紛失・盗難から一定期間分
クレジットカードには、クレジットカードの紛失・盗難により、不正利用された場合に、その被害分を補償するための『盗難補償』が付帯しています。
盗難補償が適用されるのは、カード会社に不正利用を報告した日からさかのぼって、60日以内の被害分であることが一般的です。
こまめに利用明細などをチェックして、不正利用にすぐに気づけるようにしておくことが大切です。
三井住友カードを紛失・盗難の際は|クレジットカードの三井住友VISAカード
返金されないケース
以下のようなケースでは、クレジットカードを不正利用された場合でも、返金や盗難補償の対象外となります。
サインの無記名や暗証番号に問題あり
クレジットカード裏面の署名欄にサインを記名していない場合や、『0000』など予測しやすい暗証番号にしていた場合は、返金や盗難補償が受けられません。
なぜなら、クレジットカードの利用規約に違反しているときや、名義人に過失がある場合には、返金や盗難補償の対象外と定められているからです。
返金や盗難補償が受けられないと、不正利用された分が自己負担になってしまうので注意しましょう。
家族やカードを預けた第三者の利用
クレジットカードを家族や、カードを預けた第三者に勝手に利用された場合も、返金や盗難補償の対象外となります。
他人にクレジットカードを預けたことや、暗証番号を漏らしたことが、名義人の過失とみなされるからです。
クレジットカードは自分できちんと管理し、家族であっても暗証番号は教えないようにしましょう。
不正利用で捕まることはあるのか
クレジットカードの不正利用は犯罪です。どのような罪に問われるのか説明します。
窃盗罪や詐欺罪
クレジットカードの不正利用は、窃盗罪や詐欺罪に問われます。クレジットカードを盗む行為が窃盗罪、クレジットカードを不正利用する行為が、カード利用店舗やカード会社に嘘をついて金品を手に入れたとして、詐欺罪に該当します。
窃盗罪に問われた場合は、以下のような懲罰が科せられます。
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
詐欺罪に問われた場合は、以下のような懲罰が科せられます。
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
自己名義のカードでも逮捕の可能性
自分名義のクレジットカードであっても、使い方によっては逮捕される可能性があります。
クレジットカードの現金化も危険
クレジットカードの現金化とは、クレジットカードのショッピング枠を換金する行為のことです。以下の行為は、クレジットカードの現金化に該当します。
種類 | 詳細 |
買取方式 | ブランド品や家電などを購入させ、それを現金化業者が、手数料を引いた金額で購入する方法 |
買戻方式 | 現金化業者が自社の商品を購入させ、手数料を引いた金額で買い戻す方法 |
キャッシュバック方式 | 現金化業者が自社の商品として、ビー玉などの安価な商品を購入させ、手数料を引いた金額をキャッシュバックする方法 |
直接購入方式 | クレジットカードの名義人が、直接現金を購入する方法 |
カード会社では、クレジットカードの現金化を禁止しています。最初から現金化するつもりでクレジットカードに入会するなど、悪質な場合は強制解約されたり、詐欺罪に問われる可能性があります。
ショッピング枠の「現金化は厳禁です!」|クレジットカードの三井住友VISAカード
支払い意思がないカードの利用
いずれ支払いができなくなることがわかっていながら、クレジットカードに入会するなど、最初から支払い意思がない状態でクレジットカードを利用することも、詐欺罪に問われる可能性があります。
カード会社による不正利用防止対策
カード会社側も、クレジットカードの不正利用を防止するために、さまざまな対策をしています。
楽天カードの場合
「楽天カード」 | |
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項目 | 詳細 |
年会費 | 無料 |
発行可能ブランド | JCB・VISA・MasterCard・American Express |
ポイントの還元率 | 1.0%~12.0% |
年会費無料・ポイント還元率高い・CMでも話題 | |
楽天カードの詳細へ |
たとえば、「楽天カード」の場合は、以下のような不正利用防止対策をおこなっています。
セキュリティサービス | 詳細 |
本人認証サービス | ネットショッピングの際、クレジットカード情報のほかに、本人認証パスワードの入力を求める |
カード利用お知らせメール | クレジットカードが利用されると、登録したメールアドレスにメールが届く |
不正検知システム | 24時間・365日、不審な利用がないか、クレジットカードの利用状況を監視するシステムを導入 |
ICチップ搭載のクレジットカードの発行 | クレジットカード情報を暗号化して保存できる、ICチップ搭載のクレジットカードを発行 |
不正利用をされないために
クレジットカードを不正利用されないようにするためには、利用者側も不正利用防止対策をすることが大切です。
利用明細書や売上伝票の取扱に注意
クレジットカードの利用明細書や、売上伝票(お客様控え)の取扱には注意しましょう。
クレジットカードの利用明細書には、クレジットカードの名義人や住所、クレジットカードの番号や引落口座情報など、さまざまな個人情報が記載されています。
また、売上伝票にもクレジットカードの国際ブランドや、クレジットカードの番号などの情報が記載されていることがあります。
そのため、クレジットカードの利用明細書や売上伝票を適切に処分しないと、クレジットカードの情報が盗み取られ、不正利用されることが考えられます。
利用明細書や売上伝票を処分するときには、個人情報が記載されている箇所を塗りつぶしたり、シュレッダーにかけたりしてから捨てましょう。
会計時にカードから目を離さない
クレジットカードを不正利用されないためには、会計時にクレジットカードから目を離さないことも大切です。
クレジットカードから目を離した隙に、スキミングによってクレジットカードの情報を盗み取られる可能性があるためです。
また、海外で買い物するときなど、その店舗が信用できるのか不安な場合は、現金決済に切り替えることも検討しましょう。
怪しいメールのURLはクリックしない
フィッシング詐欺の手口に引っかからないためには、怪しいメールのURLはクリックしないことが重要です。
カード会社や金融機関などを装った、いかにも本物らしいメールが送られてくることもあります。
このような場合は、カード会社や金融機関などに、メールを送ったかどうかを電話で問い合わせることが肝心です。
電話で問い合わせる場合は、メールに記載されている連絡先ではなく、自分でネットなどで電話番号を調べてかけるようにしましょう。
まとめ
クレジットカードの不正利用は、機械でクレジットカードの情報を盗み取られたり、EC事業者などから、個人情報が流出したりすることが原因で起こります。
万が一、不正利用されてしまった場合は、速やかにカード会社と警察に届け出ましょう。