クレジットカード決済の仕組み
クレジットカード払いした代金の返金までの流れを理解するには、クレジットカード決済の仕組みを知る必要があります。まずは、購入者と加盟店、カード会社、決済代行会社の関係性を見ていきましょう。
- 購入者:商品を購入し、クレジットカード払いをした人
- 加盟店:カード会社と加盟店契約を締結し、クレジットカード決済を導入した店舗
- カード会社:クレジットカード発行元
- 決済代行会社:加盟店契約の手続きや加盟店への入金などの業務を代行する会社
購入者と加盟店、カード会社
購入者・加盟店・カード会社の関係性は、クレジットカード決済の流れを見れば把握できます。
- 購入者が商品・サービスをクレジットカード払いで購入する
- 加盟店がカード会社に売上票を送付する
- カード会社は売上票をもとに、加盟店に対して商品・サービスの代金を立て替え払いする
- カード会社は購入者に立て替え払いした代金を請求し、所定の日に口座から引き落とす
つまり、購入者と加盟店との間にカード会社が入り、支払いの代行業務をしているということです。そして、カード会社は加盟店に立て替え払いする際に、代行手数料として代金の数%を差し引きます。これがカード会社の主な収入源です。
購入者からは年会費や分割手数料などを徴収する場合もありますが、それ以外の手数料は基本的にかかりません。
カード会社と決済代行会社
次に、カード会社と決済代行会社、加盟店の関係性を解説します。加盟店がクレジットカード決済を導入する場合、カード会社と加盟店契約を結ばなくてはなりません。複数のクレジットカードを使えるようにしたい場合は、複数のカード会社と契約する必要があります。
しかし、カード会社の審査は厳しいうえに、カード会社ごとに審査基準が異なるため、非常に手間がかかります。また、クレジットカード決済用のシステムや機器を自前で用意する必要があるので、多額の資金が必要です。
決済代行会社は、加盟店がこうした審査の手間や導入コストを削減できるよう、カード会社と加盟店の間に入り、契約手続きの代行や決済システム、機器の貸出事業を担っています。
決済代行会社を介する仕組み
決済代行会社を介すると、決済代行会社が複数のカード会社との契約手続きを代行します。そのため、加盟店は契約手続きの手間ひまをかけることなく、複数のクレジットカードを利用できるようになるのです。
クレジットカード決済のシステムや機器も決済代行会社が貸し出してくれるので、自前で用意する必要がなくなり、コストを大きく削減できます。
また、個別にカード会社と契約していると、各カード会社からばらばらに代金が入金されます。しかし、決済代行会社を介すると、各カード会社からの代金が決済代行会社に入金され、それを決済代行会社がまとめて加盟店に入金するので、売り上げの管理もしやすくなるのです。
「決済代行会社」とは?コストや導入メリットは? | クレジットカード決済
クレジットカード払いの返金の流れ
現金払いで購入した商品の場合、店舗に商品を返品すれば、その場で返金を受けられます。しかし、クレジットカード払いの代金の返金は、現金払いのように単純にはいきません。ここからは、クレジットカード払いした代金の返金の流れを見ていきましょう。
まずは購入した店舗へ商品の返品
クレジットカード払いした代金の返金を受ける場合、まずは購入した店舗に商品を返品する必要があります。基本的にレシートがないと返品を受け付けてもらえないので、とくに高額商品を購入するときには、レシートを取っておくようにしましょう。
商品とレシートを購入した店舗に持参し、返品の旨を伝えれば、店舗側でクレジットカード払いした代金の返金処理が行われます。ただし、現金払いのケースとは異なり、その場で返金されることはありません。
支払い予定から差し引きされる
クレジットカード払いした代金は、支払い日に引き落とされる『請求額』から差し引きされることで返金されます。ただし、請求額が決定する前の返品の場合は、請求そのものが取り消されるため、請求額からの差し引きはありません。
請求額より返金額の方が多い場合
請求額よりも返金額の方が多い場合は、まず請求額から返金額が差し引かれ、残額が引き落とし用口座に振り込まれます。
あくまでクレジットカードを通じて行われる
クレジットカード払いした代金の返金は、あくまでカード会社を通じて行われます。クレジットカード払いを利用した場合、購入者や加盟店と金銭のやり取りをするのはカード会社であるためです。
購入者と加盟店の間には金銭のやり取りはないため、カード会社を通す必要があります。どれだけ急ぎで返金してほしくても、加盟店から現金で返金してもらうことはできません。
返金の内容は締日前後で異なる
クレジットカード払いした代金の返金が、請求額から差し引かれる形になるのか、請求自体が取り消されることになるのかは、商品を締日の前と後のどちらで返品したかで異なります。
カード利用の毎月の締日と支払い日はいつですか? | 楽天カード:よくあるご質問
締日と支払日の意味
返金内容の解説の前に、『締日』と『支払い日』について理解しておきましょう。
- 締日:クレジットカード払いした代金の請求額が決定される日
- 支払い日:決定した請求額が、引き落とし用口座から引き落とされる日
例えば、楽天カードは締日が毎月月末、支払い日が翌月27日です。この場合、1月1日~1月31日の間にクレジットカード払いした代金が、2月27日に引き落とされます。
なお、どの月の請求に含まれるのかは、『請求処理が完了した日』で決まります。仮に、楽天カードで1月31日にクレジットカード払いしたとしましょう。
加盟店がその日のうちに請求処理を完了させれば、2月27日に引き落とされます。しかし、処理の完了が翌日になった場合は、3月27日に引き落とされます。
締日の前の場合
締日の前に商品を返品したときには、まだ請求額が確定していないので請求そのものが取り消されます。よって、請求額からの差し引きはありません。締日はカード会社によって異なるので、手持ちのクレジットカードの締日を調べておきましょう。
締日の後の場合
締日の後に商品を返品したときは、すでに請求額が確定しているため、請求額から差し引くことで返金が行われます。このとき、返金額が請求額よりも大きい場合は、差額が引き落とし口座に振り込まれます。
明細をきちんと確認しよう
クレジットカード払いした代金の返金を受けるときには、カード会社から届く明細を確認しましょう。返金処理のミスなどで返金されていなかったり、返金額が間違っていたりする可能性があるためです。
明細書には返金分がマイナスで記載されるので、金額が正しいかどうか確認しましょう。請求額よりも返金額の方が多く、引き落し口座に振り込みになった場合は、通帳の明細を見るとよいでしょう。
返金処理にかかる時間は?
商品を返品した翌月に、クレジットカード払いした代金の返金されるとは限りません。返金処理が締日を過ぎていたり、カード会社側の事務処理に時間がかかったりすると、それだけ返金までに時間がかかります。
商品の返品から返金までどれくらいの時間がかかるのか、目安を知っておきましょう。
目安は2カ月
商品の返品が締日を過ぎていると、事務処理が間に合わず、翌々月の請求額からの差し引きになる場合があります。そのため、返金までの時間は2カ月程度を目安にするとよいでしょう。
もし2カ月以上たっても返金されない場合は、まず商品を購入した店舗に問い合わせましょう。店舗側で返金処理のミスや遅れが発生している可能性があるからです。
カード会社は店舗側から返金処理がなされない限り、そもそも返品があったことが把握できないので、返金のしようがありません。店舗側の返金処理が正常に完了している場合は、カード会社側のミスや遅れが考えられるので、カード会社に問い合わせましょう。
百貨店やコンビニなど加盟店が手続き
クレジットカード払いした代金の返金処理は、加盟店が手続きするものです。例えば、インターネット上のショッピングモールに出店しているネットショップで、クレジットカード払いで商品を購入したとします。
この場合、返金処理は加盟店であるネットショップに依頼しなくてはなりません。ショッピングモールに連絡しても、直接ネットショップに連絡するように言われるだけです。
百貨店などでも、返金処理は百貨店のインフォメーションではなく、商品を購入した店舗に直接依頼します。
手数料に関して
クレジットカード払いした代金の返金を受けた場合、返金手数料はかかるのでしょうか。
基本はかからない
クレジットカード払いした代金の返金を受けても、基本的に手数料はかかりません。現金払いした商品を返品したときと同様、購入代金がそのまま返金されます。
交通機関はかかる場合が
返金を受けても基本的に手数料はかかりませんが、飛行機や新幹線など、交通機関のチケットの返金の場合は手数料がかかる可能性があります。購入時に返金に関する規則をきちんと確認しておきましょう。
また、交通機関以外に、宿泊施設などでも手数料やキャンセル料がかかる可能性があります。これは、現金払いの場合でも同様で、クレジットカード払いだけ特別徴収されるわけではありません。
楽天などのネットショッピングも注意
ネットショップで購入した商品を返品する場合も注意が必要です。不良品などではなく、購入者側の都合で商品を返品した場合、返金額から送料などが差し引かれることがあるからです。
また、セール商品はそもそも返品不可というケースも多いので、購入前によく確認しておきましょう。
返金に関して知っておくべきこと
クレジットカード払いした代金の返金受けた場合のポイントの取扱いなど、返金に関して知っておくべきことは他にもあります。
現金でないのはなぜか
クレジットカード払いした商品を返品したときに、その場で現金で返金されない理由は、購入者と加盟店の間で金銭のやり取りがないからということだけではありません。
加盟店が現金で返金してしまうと、返品によって売り上げがなくなるにもかかわらず、クレジットカード決済の手数料だけかかるので損失が発生することも理由のひとつです。カード会社から返金すれば手数料がかからないので、損をすることはありません。
また、加盟店で現金による返金が可能になると、クレジットカードのショッピング枠の現金化(※)ができてしまいます。商品の返品で現金化ができるとなると、それを悪用する人も出てくるでしょう。加盟店が現金で返金できないことには、このような事情もあるのです。
(※ショッピング枠の現金化とは、クレジットカードに設定されているショッピング枠を、換金目的で利用する行為のことです。ショッピング枠の現金化はすべてのカード会社で禁止されており、発覚した場合にはクレジットカードの強制解約などの措置が取られます)
ポイントはなくなる
クレジットカード払いした代金の返金を受けた場合、その商品の購入によって付与されたポイントは取り消されます。もしポイントを使用してしまった場合には、一時的にポイント残高がマイナスになり、プラスになるまでポイントが使用できなくなります。
ポイントがマイナスになるだけなら、高額な商品を購入して返品し、ポイントだけ入手すればよいという人もいますが、これは不正行為です。
悪意があったことや常習性などが認められると、詐欺罪などの刑事罰が科せられる可能性があるので、こういった行為はしないようにしましょう。
海外の場合はレートに注意
海外のネットショップなどで購入した商品を返品する場合は、レートに注意が必要です。カード会社によって、加盟店から売上票が届いた日のレートを採用して返金される場合と、返金処理した日のレートを採用して返金される場合があるためです。
返金処理の時期のレートによっては、購入代金よりも返金額が少なくなる可能性があることを理解しておきましょう。
カード払いの返金の仕訳
個人事業主や法人が、事業用の備品などの購入にクレジットカードを利用することもあるでしょう。もし、この代金の返金を受けた場合は、その旨を帳簿に記載しなければなりません。
クレジットカード払いした代金の返金の仕訳方法は、請求額から差し引かれる場合と、口座に振り込まれる場合で異なります。ここでは、それぞれのケースの仕訳方法を解説します。
請求金額から引かれる場合
クレジットカード払いで消耗品を購入して返品し、請求額から差し引かれることで返金されたと仮定して、仕訳方法を見ていきましょう。
クレジットカード払いで商品を購入した場合、支払い日ではなく、クレジットカード払いをした日に経費計上しなければなりません。これを『発生主義』といいます。しかし、クレジットカード払いした時点では実際には代金を支払っていないため、いったん『未払金』で処理します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
消耗品費 | ○○円 | 未払金 | ○○円 |
この代金が請求額から差し引かれる形で返金されたということは、消耗品費、未払金ともになくなったということです。そのため、以下のように仕訳して取り消します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
未払金 | ○○円 | 消耗品費 | ○○円 |
口座に返金される場合
それでは、返金分が口座に振り込まれた場合はどうなるのでしょうか。同じくクレジットカード払いで消耗品を購入して返品し、口座に振り込まれることで返金されたと仮定して、仕訳方法を見ていきましょう。
この場合も、クレジットカード払いで商品を購入した日に『未払金』で経費計上しています。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
消耗品費 | ○○円 | 未払金 | ○○円 |
そして、商品を返品すると、消耗品費と未払金がなくなりますが、口座に振り込みという形で返金されているため、以下のように仕訳します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
普通預金(未払金) | ○○円 | 消耗品費 | ○○円 |
内容が複雑で仕訳方法がわからない場合は、税理士などに相談し、誤りがないようにしましょう。
まとめ
クレジットカード払いした商品を返品した場合、加盟店が返金処理をすることで、カード会社から購入者に代金が返金されます。いきなりカード会社に返金を求めても、加盟店の返金処理がないと返金できないので、まずは商品を購入した店舗に相談しましょう。
返金された代金は、翌月以降のクレジットカードの請求額から差し引かれるか、口座に振り込まれます。ただし、カード会社の締日より前に返品した場合は、請求そのものが取り消されるため、請求額からの差し引きや口座への振り込みはありません。
返金の手数料は基本的にかかりませんが、交通機関のチケットや宿泊施設の代金などの返金では手数料がかかる可能性があるので、事前に返金のルールを調べておきましょう。